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2020年09月23日 [ニュース]

介護休業制度を利用してはならない!

企業の介護離職対策は的外れである。


もう5年も前の話になるが、当時の安倍政権が『介護離職ゼロ構想』を打ち出して、大企業の多くが介護休業制度を充実させてきた。頭ごなしに否定するつもりはないが、はっきり言って、「親の介護はプロに任せるべき」というコンセプトでスタートした介護保険制度に矛盾するものである。

さらに、当事者レベルの話をすれば、「親の介護が大変だろうから会社を休みなさい」というのは、介護離職対策として的外れだ。なぜなら、もともと同居していた家族ですら解決できないどころか、老老地獄事件まで起きてしまうのが家族介護の深刻さを物語っているわけで、昨日まで会社勤めをしていた娘や息子が突然、親の介護に携わろうとしても共倒れになるだけだからだ。

多くの企業が介護離職対策として講じている二大施策、「介護休業取得の奨励」および「在宅勤務をはじめとする変則勤務の奨励」に対する社員側の満足度は決して高くはない。どう考えても、老親の介護に子である社員自らが対処するというのは前提がまちがっている。
「親の介護があるのなら休暇を取っていいよ」と言われても、そんなにたやすく介護問題が解消することはないし、まして、要介護状態にある親がいる場所に仕事を持ち込んで、仕事なんてできるわけがないのである。
以下に、勤務先の介護休業制度を利用したビジネスパーソンからの相談事例を紹介する。
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<ビジネスパーソンからの相談事例>


ケース1 夫・大手電機メーカー・法人営業部門管理職(55)、妻死別、娘ひとり(21)


実母(84)の認知症。介護休業は最長で365日あるも、実際問題として休めず。介護休業を申請するも、上司は「従業員5万人で、過去10数名しか取っていない。男は3人だけ」とパワハラ発言。ようやく31日間の休暇を取得。しかしながら、休職中も電話・メールでの職務を強いられるといった具合で、完全なる違法。有給もすべて使い、どうにか復帰するも、結局、2ヶ月後に再申請。上司いわく、「管理職としてやっていけるのか」。さらに半年後には再々申請に至り、「もう無理だろ。辞めなさい」と最後通告を受け、早期退職願いを提出した。

ケース2 2015.12 夫・外資系企業役員(55)、妻専業主婦(58)、子ども3人


夫の母(85)は要介護3。大腿骨折の入院から一気に劣化。退院後半年で、排泄・暴食・時間執着・徘徊等の奇行が出る。専業主婦である妻の苦悩に納得したのが3ヵ月後。年末年始、母親とふたりで過ごした彼は、「実の母親を殺めたい」とまで思ったと切羽詰まって相談してきた。上司に言い出せない雰囲気があったのに加え、本人にも「そもそも職場にパーソナルは持ち込めない」・「ライバルに弱みを知られたくない」という価値観があった。

ケース3 妻・生命保険会社営業管理職(53)シングル、子ども3人


実家の父が認知症となり、母親の負荷を減らすため、自宅と実家を行ったり来たり。半年間の介護休業を取得。が、結局は、クライアントからの電話に出ないわけにはいかないし、携帯電話とメールで仕事をせざるを得ない状況。また、週一回の状況報告は暗黙の了解であった。暮れに職場復帰したところ、実家に近い千葉支店への転勤を打診された。拒否すると、休業中に代役を務めた後輩を補佐する役に降格させられた。

ケース4 夫・都銀融資部門管理職(56)、妻大学准教授(55)、娘ひとり(22)


認知症の実母に対応すべく、3ヵ月間、在宅&変則&半休でつなぐも何ら解決せず、一旦、現場復帰するも、再度、半年間の介護休業を取得。が、「気が狂いそうになる」。「仕事を家に持ち込んで、諸手続きや病院通い・施設探しなんてできないとわかった」と相談あり。

ケース5 夫・百貨店法人外商部門管理職(57)、子ども2人


義父の認知症が東京発覚してから半年ほど、営業の合間の時間を使って対応していたが、やがて当日のドタキャンや有休取得を連発し、上司から「またか」と叱責されるようになる。妻が病弱のため助けたいとの一念で、清水の舞台から飛び降りるつもりで人事へ出向き相談するも、「まずは所属長を通せ」と言われUターン。切り出すも「君がやんなきゃならんのか」とたしなめられる。有給と変則でごまかしていたが、3ヵ月でギブアップ。改めて年明けからの休職意向を伝えると、社員から契約社員へのシフトをオファーされる。

<介護休業の実情>


現役世代にとって、老親の介護問題は、仕事人生の浮沈を握っている。
例えば、あなたが93日間の介護休暇を取得したとしよう。大企業であれば、あなたの代わりの有能な社員は必ずいるもの。仮にあなたが老親問題を解決して職場に復帰したとしても、休暇取得前のポジションにはもう別の人材が居るわけだ。従って、当然、他の仕事を振られることになる。

しかし、もっと現実的な話として、老親の介護問題がわずか3ヵ月で解決するようなケースはまずない。多くの企業が推奨する介護休業基準の93日間で、問題行動を伴う認知症を発症した老親を説得しもの忘れ外来を受診させ、医師の確定診断を取得し、要介護認定の申請手続きと判定調査に立ち会って、入院させたり、終のすみかを探して入居させたり、果たして本当に可能だと思えるだろうか?

多くの場合、一旦、介護休暇を利用して、いろいろなことが遅々として進まぬままに復帰して、また、上司や人事部の顔色をうかがいながら、再度、介護休暇を申請する羽目になるのである。その段階になると、おそらく会社からは、「あの人はもう無理だな」という烙印を押される。それが現実なのだ。

在宅勤務?そんなことが実際にできるとお思いだろうか?
ちょっとでも介護経験のある方なら、要介護状態にある人と同じ空間に仕事を持ち込んでしっかりとこなすなど、ありえないとお判りだろう。おそらく、子どものほうがおかしくなってしまうだろう。

変則勤務?午前中だけ会社を休んで、自治体に出向いて手続きをこなしたり、ケアマネジャーの面談に同席したり、通院に付き添ったり……。腹を抱えて笑い転げたくなるほど、そんなことは現実味がない。

介護には切れ目がない。まして、老親が認知症だったとしたら、排泄介助が必須だったとしたら、素人のビジネスパーソンがなんとかしようという発想自体がすでに危険すぎる。共倒れになりかねない。夫婦関係や親子関係も崩れていく。その結果、あなたを産み育ててくれた親のことを憎悪するように変わってしまう。3日も持たずに、「実の親を殺めたいと思ってしまった」と、会社では肩で風を切って歩いてきたビジネスエリートが嗚咽するのである。それが家族介護というものなのだ。

では、企業側から見るとどうなるか。ご紹介したような大企業の場合は、仮に誰かが介護休業を取得しても、取って代わる人材がいくらでもいる。しかし、これが中小企業となると少し事情が変わってくる。ギリギリの体制で切り盛りしている場合、現場からキーマンが離脱したら、それが即、業務や業績に支障が出てしまいかねない。大企業とは、取り組むべき施策が決定的に異なるということを認識する必要がある。

中小企業や零細企業が取るべき介護離職対策とは、老親問題を抱える社員が安心して仕事に集中できる職場環境を整えることだ。在籍社員に問題が生じた時点で、当該社員・配偶者・老親のいずれかが電話を一本かけるだけで専門家のサポートが得られ、状況に応じて、社員に代わり具体的なアクションまで取ってくれるとしたらどうだろう。
子ども世帯と離れて暮らす老親世帯にとっても、老親世帯と離れて暮らす社員にとっても理想的なはずだ。社員および配偶者の手を煩わすことなく老親の諸問題に対処できるため、「介護休業」や「変則勤務」以上に社員の納得感は増すに違いない。企業側にとっても、社員の老親問題に配慮する姿勢を示すことで、パフォーマンスを落とさずに社員のロイヤルティを向上させることが可能となる。

中小企業経営者のみなさん、くれぐれも安易に大企業の介護離職ゼロ対策をマネることのないように。
本当の意味で社員が企業に欲しているのは、職場を離れやすい環境を作ることではなく、職場を離れないで済むサポートなのだから。



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