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2020年05月26日 [ニュース]

覆水盆に返らず?とある相談ケース

新型コロナウィルス感染が広まって緊急事態宣言が敷かれた5月半ば、松本で洋食堂を営む女性から電話相談が寄せられた。外出自粛で一日じゅうテレビをつけて過ごす人が増えたからだろうか。シニアからの相談が増えている。報道番組やワイドショーから続々と流れてくるコロナ関連のニュースの中には、「高齢な人ほど、感染したら数日間でアッという間に死んでしまう」といったものが結構ある。志村けんさんが亡くなって以降、その傾向がさらに加速したように感じる。そのせいで、いわゆる終活を先送りしていたシニアにも、危機意識や当事者意識が強まったのかもしれない。そんなことを考えながら、受話器の向こう側に集中していった。

電話の主は、思いのほか若く、55歳の女性。87歳の母とともに、店を切り盛りしている。両親が構えた店だったが、4年前に父親が死去。以降は、母娘二人三脚で今日に至る。相談は、彼女の姉夫婦のことだった。姉夫婦が店の2階で寝起きする母親のところに転がり込んできたのは2月下旬。コロナ災禍初期の頃だった。
なんでも、義兄が職を失って家賃も払えなくなり、次の仕事が見つかるまでの間、面倒を見てほしいと言ってきたのだそうだ。

当初は、「お世話になるんだから、お母さんの老後は私たち夫婦に任せてくれていいから」などと殊勝なことを言っていた姉夫婦だったが、ひと月も立たないうちに態度が豹変する。昼間から酒をあおり、部屋を散らかし、母親を手伝う素振りすらない。挙句の果ては、階段で躓いてケガをした母の介抱もせず、「もう歳なんだから、あんたの預金とか、全部うちらが管理してあげるよ」と、拒否する母親から強引に、大事なものが一式はいっているバッグを奪ってしまった。以降は来る日も来る日もパチンコ三昧。母親はたまらず店からほど近いアパートで暮らす次女(相談者)のところに逃げ込んだというわけだ。

話の内容に紛争性と緊急度を感知した私は、3日後、松本へ出向いた。次女に母親を連れて松本駅まで来てもらう。コロナの影響で、駅周辺の店はすべてシャッターが下りているから、やむなくJR松本駅の構内にある待合所で詳しい話を聴くことにする。幸い、待合所には人っ子一人もいない。自動販売機で買った紙カップのコーヒーをすすりながら、女優の草笛光子似の母親と、真矢みき似の次女の話に耳を傾ける。

つくづく、ひどい話だった。母親は自業自得と自分を責めていた。まったくその通りなのだが、姉夫婦の悪行は目に余るものがある。母親から通帳・印鑑・食堂兼実家の権利証を強奪し、夫婦で半ば脅すようにキャッシュカードの暗証番号を聞き出した。おそらく、日々おカネを引き出してパチンコの軍資金と酒代に費やされているに違いない。さいごまで自分たちが面倒を見るからという甘い言葉に、老い先への漠然とした不安を感じていた母親は、ついつい気を許してしまったのだという。

しかし、さらに困った話が出てきた。母親は2年前に公正証書遺言を作成していて、その内容は、全財産を姉妹で等分する…というものだという。長女夫婦の本性を知った今は、びた一文もやりたくないと嘆く。
次女の話も総合して整理すると、どうやら長女の亭主は半グレもどきのヤバい男らしい。一方の姉も、隣町で水商売をしていたようで、類が友を呼んだような夫婦なのだと言って母親は涙した。

よその親子や夫婦のことは外からはわからないと言うが、本当に信じられない話である。どんなに好感の持てる子ども夫婦であっても、通帳から何からすべてを手渡してしまうとは…。うなだれる母娘に共感の意を示しつつ、母親の要望を聞いていく。答えは明白で、「長女夫婦からおカネを取り戻したい」・「コロナの影響および自分の年齢のことを考えると、店じまいをして長女夫婦から離れて暮らしたい」・「エンディングに向けてのサポートは次女に頼みたい」・「財産もできる限り次女に分与したい」、である。

正直、ここまで意思がはっきりしていれば、私としては動きやすい。まずは、以下のことを伝え、母娘の覚悟を確認する。このケースは、母親対長女夫妻、長女対次女の闘いになる可能性が高いこと。姉夫妻の素行から考えると、母娘に危害を加えかねない事件性を孕んでいること。長女には遺留分のみで、3/4は次女に引き継ぐこと。次女は母親の老後を全面的に支えること。母娘の安全確保のため、場合によっては転居も視野に入れるべきということ。草笛光子と真矢みきの瞳に力が入っていくのが伝わってくる。ふたりの戦闘本能が覚醒したらしい。私はふたりの本気を感じ取ることができたので、今後の進め方をガイドする。

姉夫婦に悟られぬよう、短期集中で、以下3つの作業を済ませてしまう必要があります。長くても1ヶ月以内に終えたいですね。食堂が休業中ということですから、できればしばらく、妹さんのアパートか、ビジネスホテルかどこかに雲隠れということも考えてみてください。

まずは、公正証書遺言の無効もしくは内容変更の手続きを早急にやりましょう。もちろん、私も同行します。いや、無効手続きをした後で再作成しましょうか。証人がふたり必要になりますが、ひとりは私がやるとして、もうひとり。お心当たり、ありますか?ないようであれば、こちらで用意することも可能です。考えてみてください。

同時並行で、金融機関に行きます。これは、お母さんと妹さんでやってもらうほうがベターですね。第三者の私が一緒にいると、逆に銀行側が構えてしまうと思います。単純に、「通帳等が入っているバッグをどこかに置き忘れてしまったようだから、おカネを引き出されないように口座を止めてほしい。同時に、新しく通帳を作ってほしい」といったシナリオでいきましょう。その際、お母さんの本人確認書類が必要になりますけど、何か手元に残ってますか?免許証は…ないですよねぇ。パスポートも…ありませんかぁ。マイナンバーカードは?写真がついてないですかぁ。医療保険証と介護保険証だけですかぁ。市役所で住民台帳を入手してください。ここはお母さん、踏ん張りどころです。できたら、長女夫婦に奪われたという話はしたくないんですよねぇ。銀行に紛争性があると思われると、お母さんの年齢的なこともあって、ちょっと面倒なことになりますからねぇ。まずは紛失で話してみて、本人確認で埒が明かなかったら事実を話す…。そういう線でいきましょう。

あと、もう早いうちから、お母さん名義の財産の管理は妹さんに引き継いじゃいましょうか。母娘間で財産管理等委任契約というのを結んでもらいます。私、立ち会いますから。これさえ締結してしまえば、妹さんは少しずつお母さん名義の口座から現金をご自分の口座に振り替えていきましょう。国税に目をつけられないような引き出し方は、別途ガイドさせていただきますから安心してください。お母さんは、もうすべて観念して、年金用の通帳以外は妹さんに託すということでどうでしょう。

あとは…。実家ですね。これから財産の棚卸をやっていきますけど、総額時価がいくら程度になるのか。それにもよりますが、いちばん簡単なのは、最悪、実家だけを長女に渡してしまう。キャッシュはすべて妹さん。
棚卸用のヒアリングシートを持ってきたので、この後、聴かせてもらっていいですか?

遺言の変更と財産管理等委任契約は次回やるとして、何といっても銀行ですね。これ、お母さん、できそうですか?ちょっと、私を銀行員だと思って演じてみてもらえますか?いや。これは、もしかしたら、お母さんにとっては、人生さいごの大仕事になるかもしれませんよ。ここを乗り切っていただかないと、今後のことを託したい妹さんには何も残せずに、お父さんから引き継いだものも全部、姉夫婦に散財されちゃうかもしれないんですよ。厳しいようですが、お母さんも認めていたように、お母さんが心の隙間をつかれて渡してしまったという側面もあるのですからね。

どうでしょうか。口座を止めて、遺言を変更して、母娘間で財産管理等委任契約を結んでしまう。今後は、新しく作った通帳と届出印とキャッシュカード、すべて妹さんに渡して関してもらうことになります。あっ。そうそう。印鑑登録もやり直しちゃいましょう。そうすることで、姉夫婦に剥奪されたモノをすべて使えない状態にしてしまうことができます。ここまでを1ヵ月間で一気にやってしまうべきです。私もできる限りのことをしますんで、ここはひとつ、一致団結して、3人でお母さんの命とおカネを守り抜きましょう!


コロナがあけた今年の初夏は、信州で過ごすことが多くなりそうである…。


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