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2020年01月03日 [ニュース]

父の話 〜 生涯青春アカデミーへのお誘い

2020年は、父が他界してから10年目の年に当たる。だからというわけではないけれど、今回は、父の引き際について書かせてほしい。

父がアルツハイマーに端を発し、少しずつ少しずつ衰弱していった過程で、もっとも強烈な印象として刻まれているのは、父と子と孫(私の長男)の男3人で南九州へ旅したことだ。2005年8月のことである。もう少し正確に言うと、旅行自体というよりは、その最終日の夜の父とのやりとりのことである。

宿泊先で夕食を済ませたにもかかわらず、夜食にテリヤキバーガーを食べたいと言い出した孫がお目当てをほおばる傍らで、父が私に切り出した。

「オレもどうなるかわからないからさ、これ。後始末のことが書いてあるから渡しておくよ。いつか母さんにも宏から話してさ、うまくやってな」

差し出された商工会議所のメモ用紙は10数枚。そこには、こんなことが書かれていた。

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父の後始末について。思うままに。
葬儀は不要。そんなおカネをかけるくらいなら孫になんか買ってやって。
墓は先祖とは別にしたいから購入済み。
入院したとしても余計な治療はするな。何もせずに天寿をまっとうさせてほしい。
そんなおカネを払うなら母さんにエビとカニ(母の大好物)でも食べさせて。
契約書類は書斎の金庫。暗証番号は1220(母との結婚記念日だ!)。
株は一昨年、すべて売って現金化完了。
権利書、預金通帳3冊、印鑑、家系図もすべて金庫のなか。
家と土地の名義は、母さんにするか、一気に宏にしてしまうか。
無駄な税金を払わない方法を宏がよく考えて。相続税が非課税になる金額まで、早めに宏と母さんの口座に移してしまうこと。これ、絶対にそうすること。くれぐれも無駄な税金を払わなくていいようにな。
税金を無駄に払うくらいなら、子どもたちと旅行でも行きなさい。
とにかく、後のこと、母さんのことは宏に任せたから。
その上で。自分の人生だから、自分のこころに正直に、自分らしく主体的に生きていくのがいいぞ。
ま、いろいろあったけど、結果オーライ。
宏のいちばん大事な時期に、忙しくて話も聴いてやれなくて済まなかった。運動会、受験、結婚式、家族旅行。宏には楽しませてもらった。幸せをたくさんもらった。
うちに生まれてくれてありがとう。感謝感謝......。

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「何よこれ。いつの間に書いたの?泣いちゃうでしょ」

そう言った私に、父はポケットをごそごそやったかと思うと、茶封筒を取り出した。

「カセットテープ。これにさ、メモった内容を吹き込んでおいたから。うまく録れてるかわからんけどさ。ま、一応な。渡しとくから」


父の望むようにしてあげたい。そうできるように努めよう。あれは、そんな覚悟と想いが湧き立った瞬間だった。私は今でも思うのだ。ボケてさんざん母を苦しめた父だったが、あの日あの時あの瞬間の父は、ボケてなどいなかった。まちがいなく、しっかりしていた頃の父であったと確信している。見えざる力が、奇跡の時間を運んでくれたにちがいないと。科学では解明しようのないことが世の中にはたくさんある。これだから人生は面白いのだ。

ボケていきながらも自分のエンディングに対する希望をきちんと書き残し、自分自身の言葉でに伝えることで、計画を実現させた父には、敬意の念を表したい。

その後、父は2010年11月14日に死んだ。
告別式の日、火葬場の煙突から立ち上る絹の白糸が、天空に戯れる桃色子羊たちに溶けていくのを眺めながら、7年にもおよんだ父の療養期間のことが走馬灯のように甦ってきた。長かったような気もするし、アッという間の出来事だったような気もする。あのときの光景は、いまでも鮮明にカラー動画で描くことができる。

認知症の発症、数々の異様な行動、警察やご近所にかけた迷惑、病医院や施設とのトラブル、宮崎への転居…。この間、介護疲れで母は二度救急車で運ばれ、やがて脳梗塞が発覚。私は実家で母を見守りながら仕事に出かける日々が始まった。
 
家じゅうが疲弊し、お金は湯水のように流れ出ていった。当時から医療・福祉の世界で仕事をしていた私ではあったが、医療や介護に係る諸々の手続きは複雑で、かつ使い勝手は決していいものでないことを改めて痛感した。ましてや、両親の代わりに病医院や自治体に出向いてやりとりをしようとすると、個人情報がどうたらこうたらと言われて、なかなかどうして面倒くさい。実の息子であっても、だ。

世界にも類を見ない長寿国のニッポンだが、逆に、長生きしなければならない時代ゆえのさまざまなリスクを背負わされていることを忘れてはならない。例えば、医療・介護・お金・葬儀等の問題。これらは、命あるものであれば誰もが必ず通る道でありながら、そもそも積極的には考えたくないテーマであることに加え、専門性が高そうでとっつきにくい分野である。だから、ついつい先送りにしてしまった結果、いざその時になって思わぬ不利益を被ってしまうという危険を孕んでいる。手っ取り早く言えば、要するに、払わなくてもいいお金を必要以上に費やしてしまうということ。そんな例が巷には溢れている。

そして、多くの場合、分かれ目はきわめてシンプルである。

老後に必要となる、ちょっとした情報や知識を持っているかどうか。
いつでもなんでも気軽に相談できる窓口を持っているかどうか。
老後に出くわすであろう想定課題について、自分がどうしたいのかが明確になっているかどうか。
         
たったこれだけの違いで運不運が分かれてしまうのが現実だ。つくづく、私たちは元気なうちにこそ、しっかりと老後の計画を立てて、準備をしておくべきだと思う。そんな生き方を、私は「クールな老後」と呼んでいる。

自分の意図を子どもたちにきちんと伝えておけばこそ、子ども側にも親のエンディングを支える覚悟、親の希望を叶えてあげたいという思いやりが芽生えてくるものではないだろうか。そうすれば、仮に認知症になってしまったとしても、自分の望み描いたとおりの人生をまっとうできる確率が高くなるというものだ。何も準備をしておかない場合と比べて、その確率はだんぜん高くなる。
 
百寿倶楽部が開催する生涯青春アカデミーは、みなさんが自分自身の円滑な老後計画を考えるきっかけを与える場として位置づけている。機会があったら是非とも生涯青春アカデミーに参加してみてほしい。





そして、子に媚びず気を遣わず、誰に負い目も引け目もない……。そんな自律した、クールな老後を過ごすための第一歩を踏み出していただけたとしたら、こんなに嬉しいことはない。

2020年。どこかの街で、みなさんとお目にかかれることを楽しみにしています!


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