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2019年03月27日 [ニュース]

往生際の美学 〜現代版家督相続のすすめ〜

私がシニアに提唱しているのが、「往生際の美学」。これは、老老地獄に陥らないために、目の黒いうちに資産継承してしまおうというものである。どんなに頑強なシニアであろうと、最後の最期にはだれかのサポートが必要になるわけです。ならばここは割りきって、ギブアンドテイクといきましょう…ということです。

具体的なタイミングとしては、概ね75歳(後期高齢者の入口)が妥当な線だと思います。あるいは、身近な人たちの誰かから、「あれっ?●●さん、ちょっとおかしいのでは?」と指摘された時点。
この、いずれか先に訪れた段階で、親子の主従関係を移行していく。つまり、親が完全にボケてしまう前に、老後の支援について役割や要望を託すことと引き換えに、資産を子に継承していく…。これを私は『現代版家督相続』と呼んで、ここ数年、周囲のシニアに提唱し続けています。

事例としてはまださほど多くありません(20ケース程)が、こうすることで、子ども側にも親への感謝と、親のエンディングを支える覚悟が芽生えてくることはまちがいありません。これはもう確信しています。親がいつまでも資産状況や遺産分割の方向性を示さないでいるから、示さぬままに心身がボケてしまうから、世の中に老老地獄問題(介護虐待、介護自殺、介護心中、介護殺人、相続争い、相続殺人など)と揶揄される厄介な問題が起きてしまうのだというのが私の(現時点での)結論です。
元気なうちからの資産継承は、結果的に親子間の信頼と絆を強めるものだと思っています。多くのシニアが望む、良好な親子関係を回復するための唯一の方法と言えるかもしれません。こうすることで、子に媚びず気を遣わず、誰に負い目も引け目もない…。そんなクールな老後を実現できると思っています。

「おカネはおっかねぇー」というのは本当のことです。大人になると、兄弟姉妹だって、子どものころのように仲が良いわけではありません。親が亡くなるまでは、とても仲睦まじく見えた場合であっても、おカネが絡むと一筋縄ではいかなくなるものです。それに拍車をかけるのが、それぞれの配偶者の存在です。親が遺したわずか100万円の預金を巡って、テレビドラマのような壮絶な罵り合いを展開する兄弟姉妹をいやというほど見てきました。
子どもたちを愛しているのであれば、悪いことは言いません。元気なうちからエンディングを計画すべきです。誰に何を引き継ぐのか。早いうちから身辺整理し、澄みきった心で最期に臨みたいものです。これは親世代さいごの責任ではないでしょうか。とにもかくにも、早いうちに、おカネに対する執着から解放されるのがいいと思います。

往生際の美学とは、現代版の「隠居」と言い換えてもいいでしょう。旧民法下では「隠居」というシステムがあって、60歳にもなれば、父親が長男に家長の地位と財産を引き継いで、子どもから生活費をもらいながら暮らしていたものです。特に、弁護士やら裁判所やらと関わることもなく、です。
それでは、現代版家督相続(隠居)の具体的な方法はどうなるか…。
ポイントとなるのが、「財産管理委任契約」という資産承継術です。年金と一定の預金だけは除いて、それ以外の財産と相続人(子ども)をマッチングして、個々に文書を取り交わして、通帳と印鑑を引き継いでしまう。もちろん、暗証番号も教える。子どもは、アトランダムに親名義の口座から少しずつ自分名義の口座に現金を移管していく。そうすることで、実際に親がエンディングを迎えるまでに、相続税非課税レベルまで親の財産減らしをすることが可能となる…というものです。
なお、この話は、合法か非合法かというレベルの話ではありません。運用レベルの話です。親名義の口座から親のキャッシュカードで預金を引き出す場合には、「贈与非課税枠である年間110万円まで」とか、「子どもや孫の扶養や教育資金援助といった使途に相応しい範囲にとどめておく」等々の配慮はなされてしかるべき…と言い添えておきます。

そうそう。親が早期にやっておくべきことがあと2つあります。
証券と定期預金。株は相続が面倒なので、多少の損には目をつむって現金化してしまうこと。あと、定期預金はこの際、普通預金に振り替えてしまうこと。親がボケてしまったら、定期預金を解約することはかなり厄介な作業になります。引き継ぐ子ども側後の面倒を、事前に解消してからバトンタッチしてあげてほしいものです。
で、親は国からの受給年金と別に、継承した資産の中から、あらかじめ財産管理委任契約で取り決めた金額を子どもから毎月受け取るようにする…。「現代版家督相続」とは、そんなイメージです。

繰り返しますが、旧民法化の日本では、親世代が60歳ともなれば当然のように行われていた慣習です。そこには家庭裁判所も信託銀行も公証役場も成年後見制度介在することはなかったのです。親子や家族の絆をベースに、きちんと親から子へと家督と財産が引き継がれていったのです。
法律や契約といったイレギュラーなものを拠り所にするのは、何かしらの事情で親子の絆を再構築できないことが分かってからでも遅くはありません。日本の「家」の良き慣習を再認識し、親世代がリードしながら、現代版家督相続という文化を提唱する『人生100年時代の老後革命』を推進していきたい…。そんな想いを胸に、私は日々、活動をしています。

さて、問題となるのは、家督相続をするタイミングです。人生100年時代と言われる今日、50歳や60歳で思い切る親世代はなかなかいないと思いますが、遅くとも後期高齢者と烙印を押される75歳になったら、あるいは、少しでもボケの兆候を指摘されたとしたなら、もう観念してはどうでしょうか。死んだりボケたりしてしまってからでは遅いのす。親が伝えそびれてしまったら最後、子どもは親の財産に手をつけることができなくなってしまうのですから。
親が死んだ後で子どもたちが手続きするのに、いまの時代は多大な時間と労力がかかります。金融機関で口座凍結を告げられ、家庭裁判所に成年後見人をつけてもらうよう申請して、数ヶ月後に現れた見ず知らずの気むずかしそうな法律家もどきに通帳と印鑑を預けねばならなくなります。毎月の報酬まで支払ってね。
私なら、想像しただけで悪寒が走るというものです。成年後見人が依頼者の預金を持ち逃げしてしまうなんて事件も増えています。どうせダマされるのであれば、まだわが子にダマされたほうがマシではないでしょうか。
私は、『現代版家督相続』こそが、親世代が自分の描いたエンディングをまっとうできる唯一無二の方法であると、人生100年時代の老い先案内人の自負の念を込めて、心の底から確信しています。


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